ここ1〜2年で、Enpassに関するこのような疑問をよく目にするようになりました。Enpassは「デスクトップ版が無料」「スマホ版は一度購入すればずっと使える」という買い切りモデルで人気を集めたパスワードマネージャーです。しかし、2024年以降に料金体系が変わったという情報を見かけ、気になっている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、2026年6月時点の公式料金ページの情報をもとに、Enpassの現在の料金体系・セキュリティ仕様・使い勝手を正直に評価します。 「まだ買い切りで使えるのか」「サブスクに変わったなら他サービスと比べてどうか」という疑問に対し、公式情報をもとに回答いたします。
この記事でわかること
- Enpassの料金(2026年10月時点・公式サイトで確認)
- 「買い切り」「3年一括払い」の現状と正直な評価
- セキュリティ仕様(AES-256・SQLCipher・監査履歴)の実調査結果
- 1Password・Bitwardenとの具体的な違いと向いている人
Enpassとは?
Enpassは、インドのSinew Software Systemsが開発し、現在はEnpass Technologies Inc.が提供しているパスワードマネージャーです。Windows・macOS・Linux・iOS・Androidに対応しています。Enpassの最大の特徴は、「自社サーバーを持たない」サーバーレス設計にあります。
主要なパスワード管理サービスである1Password、Bitwarden、NordPassは、暗号化されたボールトデータを各社のクラウドサーバー上に保管しています。これに対し、Enpassはデータをローカルデバイスに保持する設計となっており、同期を行う場合のみ、ユーザーが指定したiCloud、Dropbox、OneDrive、Google Drive、Boxなどのクラウドストレージを経由させる仕組みです。
暗号化の仕様(公式ドキュメント実調査)
Enpassの公式セキュリティページ(enpass.io/security/)で確認したところ、データベースにはSQLiteの暗号化拡張ライブラリである SQLCipher が採用されており、 AES-256-CBC による暗号化が行われていることが確認できました。また、鍵の生成には320,000回のストレッチングを伴う PBKDF2-HMAC-SHA512 が使用されており、ブルートフォース攻撃に対する耐性を高める設計になっていると記載されています。

SQLCipherは、Signalをはじめとする多数のアプリで採用されている実績のあるライブラリです。独立した第三者監査としては、2018年にVerSprite、2022年と2023年にCure53による監査を受けて報告書を公開しており、SOC 2 Type II監査やISO/IEC 27001認証も取得しています。一方で、競合である1PasswordやBitwardenと比べると、公開されている監査報告の数は多くありません。
なぜ「買い切り」と呼ばれてきたのか
Enpassは過去に「デスクトップ版を永続的に無料提供し、スマートフォン版は一度購入すれば追加費用が発生しない」という独自のビジネスモデルを採用していました。この仕組みが「買い切り型のパスワードマネージャー」という評価につながり、月額課金への抵抗感を持つユーザー層から特に高い支持を集めてきた経緯があります。一方で、2024年以降に料金体系の見直しが行われ、現在の公式サイトで案内されているプラン内容も変化しています。具体的な変更点については、次のセクションで公式の料金情報をもとに詳しく解説します。
料金プラン(2026年10月時点)
公式の料金ページ(enpass.io/pricing/、2026年10月確認)で案内されている料金体系は以下の通りです。


個人向けの有料プランは、年払い・3年一括・買い切り(Lifetime)の3種類で、ほかに家族向けのFamilyプランがあります。
| プラン | 月額(年払い換算) | 支払い総額 | 対象人数 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| Premium(年間サブスク) | 1.99ドル/月 | 23.88ドル/年 | 1人 | 毎年更新 |
| Family(年間サブスク) | 3.99ドル/月 | 47.88ドル/年 | 最大6人 | 毎年更新(セール時は割引あり) |
| 3-Year Plan(3年一括) | 約1.39ドル/月(3年換算) | 49.99ドル(一括) | 1人 | 「2年分払えば3年使える」一括払い |
| Lifetime(買い切り) | — | 99.99ドル(1回のみ) | 1人 | 追加の更新費用なし |
| デスクトップ版(無料) | ¥0 | ¥0 | 1人 | Windows / macOS / Linux。スマホ同期は有料プランが必要 |
最新の正確な価格はEnpass公式サイトでご確認ください。為替変動により円換算額は変動します。
今回の検証では、2つの点に注目しました。1つ目は、デスクトップ版(Windows / macOS / Linux)が現在も無料であることです。もう1つは、スマートフォン(iOS・Android)との同期やモバイル端末でのフル機能利用には有料プランが必要ですが、PCのみで使う用途であれば引き続き無料で使い続けられるという点です。
もう一つの選択肢として、「3-Year Plan」が用意されています。このプランでは、一度に49.99ドルを支払うことで3年間利用できます。年換算で約16.7ドルとなり、年間サブスク(23.88ドル/年)を3年続けるより割安です。さらに、一度の支払いでずっと使える買い切りの「Lifetime」(99.99ドル)も公式サイトに掲載されています(いずれも2026年10月時点の通常価格)。
セキュリティ仕様の調査
料金体系の次に関心が高まるのがセキュリティ面です。
公式サイトのセキュリティ設定(参考)
参考までに、公式サイトのHTTPセキュリティヘッダー(HSTS・CSPなど)の設定も確認しました(2026年6月時点)。ただ、ヘッダーの返り方は確認方法や時期によって変わり、ボット対策の画面が返るサイトもあるため、点数での比較は控えます。これはWebサイト側の設定であり、保管データの暗号化の強さとは別の話です。
インフラとDNSセキュリティ(2026年6月時点)
DNSレコードを確認すると、Enpassのウェブサイトは Amazon Web Services(AWS) 上で運用されています。

DMARCポリシーについて特に注目しました。2026年6月の確認では、v=DMARC1;p=reject;sp=reject;pct=100という最厳格設定が確認できました。p=rejectはなりすましメールをメールサーバーレベルで確実に排除する設定であり、フィッシング対策として最も強い構成です。SPFも -all(ハード拒否)で設定されており、メール認証の堅牢さは一流レベルと言えます。また、MXレコードは Microsoft 365(enpass-io.mail.protection.outlook.com)に設定されていたため、業務メールにはMicrosoftのメールインフラを使用していることがわかります。
漏洩インシデント調査:クラウドなしの強み
enpass.io および sinew.in(開発元ドメイン)について、HaveIBeenPwned API(v3)を2026年6月12日に照会したところ、漏洩登録は見つかりませんでした。

この点はEnpassのサーバーレス設計と密接に関係しています。1Passwordは2023年10月にOkta経由でHAR情報閲覧という間接的な影響を受けましたが、顧客ボールトへの直接影響はありませんでした。対照的にLastPassは2022年8月にソースコードが窃取され、同年12月には顧客の暗号化ボールトのバックアップが盗まれたことを公表しています。Enpassの場合は同社サーバーにボールトデータが存在しないため、「サーバーへの不正アクセス → パスワードデータ漏洩」という経路が構造的に成立しません。
使いやすさ・機能の実態
Enpassの公式サイト(enpass.io/features/)を直接確認し、搭載されている機能の実態を整理しました。

同期の仕組み:自分でクラウドを選ぶ
Enpassの同期機能は、iCloud・Dropbox・OneDrive・Google Drive・Box・ownCloud・Nextcloudといった、ユーザーが任意に設定したクラウドストレージを介して行われます。クラウドサービスを利用したくない場合は、同じWi-Fiネットワーク内で端末同士を直接同期する方法も用意されています。
この仕組みには、メリットとデメリットの両面があります。 主なメリットとして挙げられるのは、Enpassが廃業してもデータが消えない点や、使い慣れたクラウドサービスを選択できる点です。 一方、デメリットとしては、初期設定がやや複雑であることや、クラウドアカウントが漏洩した場合の対策を自分で検討する必要があることが挙げられます。 1Passwordは設定不要でそのまま同期が始まりますが、Enpassの場合はクラウドアカウントをつなぎこむ操作が必要です。
パスキー・生体認証への対応
2023年以降、EnpassはWebAuthn(パスキー)に対応しています。対応サービスのパスキーをEnpassのボールトに保存して管理できます。また、TouchID・FaceID・Windows Helloを使ったアンロックも可能です。2FAについては、EnpassはクラウドPMとは異なりサーバー認証が不要なため「ログイン時のMFA」概念がありません。代わりにデバイスのPINと生体認証でボールトを保護します。
日本語対応の現状
Enpassのアプリ自体は日本語での表示に対応しています。ただし、公式サポート体制は英語とフォーラムが中心となっており、1Passwordのような日本語対応のチャットサポートは用意されていません。料金ページも日本語で閲覧可能ですが、FAQやヘルプドキュメントの多くは英語のままです。日本語でのサポートを重視する場合は、1Passwordの方が完全対応しています。
1Password・Bitwardenとの比較
公式情報をもとに、Enpassと1Password・Bitwardenの比較結果をお伝えします。
| 比較項目 | Enpass | 1Password | Bitwarden |
|---|---|---|---|
| 料金(個人・年払い) | 23.88ドル/年 | 47.88ドル/年($3.99/月) | 19.80ドル/年 |
| 無料プラン | デスクトップのみ | なし(14日試用) | あり(無制限) |
| データ保管場所 | ローカル優先 | 1Passwordサーバー | Bitwardenサーバー |
| 暗号化方式 | AES-256-CBC + SQLCipher | AES-256-GCM | AES-256-CBC |
| 独立セキュリティ監査 | VerSprite(2018)・Cure53(2022, 2023) | 複数回(継続的) | 複数回(継続的) |
| オープンソース | × | × | ○(完全OSS) |
| 日本語サポート | アプリのみ | 完全日本語対応 | アプリのみ |
| 自動入力の使いやすさ | 普通 | 最高レベル | 良好 |
価格は2026年10月時点の各社公式サイトの通常価格(ドル建て)。最新価格は各公式サイトでご確認ください。
Enpassは1Passwordの半額程度という価格設定ですが、Bitwardenの有料プランは年額19.80ドルでさらに安価です。加えてBitwardenはオープンソースであり、検証性が高いという点でも優位に立っています。純粋なコストパフォーマンスを重視するなら、Bitwardenと1Passwordも比較したうえで判断することをおすすめします。
1Passwordと比較した場合、Enpassに特有の明確な利点は、データを自身の管理するクラウド上に保存できる点です。1Passwordの場合は退会するとサーバー上のデータへのアクセス権を失いますが、EnpassはDropboxやiCloudにデータが残る仕組みになっています。そのため、仮にEnpassが廃業した場合でも、データが消滅するリスクはありません。プラットフォームへの依存度を下げたいと考える方にとって、この違いは実質的な価値を持つ重要な要素です。
※公式サイトへ移動します
おすすめできる人・できない人
今回の検証と調査を踏まえ、Enpassがどのような方に適しているのか、またそうでないのかを整理していきます。
Enpassをおすすめできる人
Enpassが合理的な選択肢となるのは、特定の条件を満たしている方です。
- PCのWindows、macOS、Linux環境だけで完結できれば十分であり、スマートフォンとの同期は不要な場合 → 無料で使い続けられる
- 自社サーバーにデータを保存したい、あるいはクラウド型パスワード管理サービスのサーバー漏洩が気になる場合
- iCloud、Dropbox、OneDriveなどをすでに利用しており、それらの同期先に統合したいと考えている場合
- 3年以上の長期利用を前提としており、更新コストを最小限に抑えたい場合(3年一括49.99ドル、買い切り99.99ドル)
- 家族6人まで対応した安価なプランを探している場合(Familyプランは年払いで月3.99ドル)
Enpassをおすすめできない人
一方で、次のような方については、別のサービスを検討されることをおすすめします。
- 日本語サポートで安心したい → 1Passwordが完全日本語対応が最優先です
- 設定の簡単さを重視する → 1Passwordは設定不要で、すぐ利用できます
- 低価格かつオープンソースによる検証性を求める → Bitwardenが年19.80ドルで上位互換を実現しています
- 企業やチーム単位で一括管理したい → 1Password Teamsの方が機能面が充実しています
- パスキー認証に完全対応した最新体験を求める → 現時点では1Passwordの実装が安定しています
クラウド同期の手軽さを重視するなら
同期の設定に手間をかけず、すべての端末でパスワードをそろえたい方は、アカウントを作るだけで同期されるNordPassも比べてみてください。無料プランがあります。
※公式サイトへ移動します
よくある質問(FAQ)
最後に、Enpassについてよくある質問を以下にまとめておきます。
Enpassは買い切りで使える?
使えます。2026年10月時点の公式サイトには、一度の支払いで使える買い切りの「Lifetime」プラン(99.99ドル)が掲載されています。ほかに「3-Year Plan(49.99ドル・一括払い)」や年間サブスク(23.88ドル/年)もあります。デスクトップ版(Windows / macOS / Linux)は引き続き無料で利用できます。
Enpassのデータはどこに保存される?
A. パスワードデータは、デバイスのローカルストレージに暗号化して保存されます。iCloud・Dropbox・OneDrive・Google Driveなどのクラウドストレージを介して他のデバイスと同期させることも可能です。Enpass社のサーバーにはパスワードデータが送信されないため、これを「サーバーレス設計」と呼んでいます。
Enpassのセキュリティは信頼できる?
AES-256-CBCとSQLCipherを組み合わせ、PBKDF2-HMAC-SHA512で32万回のストレッチングを行う暗号化方式を採用しているため、セキュリティ水準は十分です。 VerSprite(2018年)やCure53(2022年・2023年)による独立監査も実施されています。 一方で、1PasswordやBitwardenと比較すると監査頻度は低く、Bitwardenのようなオープンソースによる透明性はありません。 HaveIBeenPwnedを実際に照会したところ、2026年6月時点で重大な漏洩インシデントは確認されていませんでした。
EnpassとBitwardenはどちらが安い?
年間の費用を比較した場合、Bitwarden Premium(年19.80ドル)がEnpass(年23.88ドル)より安いことが確認できました。加えてBitwardenは無料プランで無制限のパスワードを管理でき、オープンソースであるため透明性も高いという特徴があります。コストと透明性を重視する場合はBitwardenを選ぶのがおすすめです。一方でEnpassはデスクトップ版を完全無料で利用できますので、PCオンリーでの運用であれば、逆にEnpassの方が安くなる場合があります。
Enpassを無料で使い続けられる?
Windows、macOS、Linux向けのデスクトップ版は、無料で使い続けられる仕様です。一方、iOSやAndroidを含むスマートフォン環境で利用する際は、現在の公式サイトにおいて有料プランへの加入が必須となります。かつての「スマホアプリを一度購入すれば永続利用」というモデルはなくなり、現在は全端末で使える買い切りの「Lifetime」プラン(99.99ドル)が用意されています。
まとめ
Enpassはサーバーレス設計を核とするパスワードマネージャーです。2026年6月の確認では、DMARC設定がp=rejectという最厳格な水準であることがわかりました。また、HaveIBeenPwnedへの漏洩記録は存在せず、AES-256-CBC + SQLCipher + PBKDF2-HMAC-SHA512による暗号化仕様も業界標準を満たしていると言えます。
かつての「買い切りPM」としての魅力は、正直に申し上げて薄れていると感じます。2026年10月時点の主なプランは、サブスクリプション(23.88ドル/年)、3年一括(49.99ドル)、買い切りのLifetime(99.99ドル)です。 同価格帯でBitwardenがオープンソースとして提供されており、年間19.80ドルという点も考慮する必要があります。こうした状況から、新規ユーザーに対してEnpassを積極的にすすめにくいのは事実です。
| あなたの状況 | おすすめ | 理由 |
|---|---|---|
| デスクトップPCのみ・コスト¥0にしたい | Enpass(無料) | Win/Mac/Linux版が永続無料。同期不要なら最安 |
| スマホ含めて使いたい・安さ重視 | Bitwarden | 無料プランでスマホ対応。有料版も年19.80ドルで最安クラス |
| 日本語サポート・使いやすさを最優先 | 1Password | 完全日本語対応・自動入力が最も使いやすい |
| 家族6人まで使いたい・コスト重視 | Enpass Family | 年払いで月3.99ドル。6人分として割安 |
| クラウドPMのサーバー漏洩が心配 | Enpass | サーバーレス設計。自分のクラウドにデータが残る |
パスワード管理ツール選びで最も重要なのは、長期的に使い続けることだと考えます。少し高価でも、日本語でのサポート体制が整い、自動入力の快適さ重視なら1Passwordを選ぶのがおすすめです。一方で、コストパフォーマンスを優先しつつ、オープンソースによる透明性を確保したいという方にはBitwardenが向いています。Enpassが最適な選択肢となるのは、利用環境が「デスクトップのみ」に限定される方や、「クラウド型パスワード管理ツールを避けたい」という条件に当てはまる場合です。
おすすめパスワードマネージャーの総合比較の内容も併せて確認したうえで、ご自身の利用目的に最適と思われるサービスを選んでみてください。

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